2025.12.31 | Podcast
株式比率の罠とは?共同起業4ヶ月で決別した社長が語る「失敗から学んだ起業の真実」

(ゲストプロフィール)
2014年より建築業界でレスポンスマーケティング支援に従事。2021年に株式会社DONUTSへ入社し、入社2か月目で営業成績全国2位を達成し、入社最短ギネス記録を樹立。その後も全国1位を複数回獲得。2025年に株式会社ダイレクトヒューマンマーケティング代表取締役に就任し、上場企業経営者を中心にオフラインマーケティング・資金調達・営業支援を展開。累計200名超が参加する上場企業経営者コミュニティを主宰し、実直に伴走する支援を強みとする。さらに福井県鯖江市との新規事業や秋田・北海道の学校への寄付など地方創生にも注力し、地域と企業をつなぐ活動を推進している。
― 共同創業4ヶ月で見えた“社長に最も必要な条件”とは ―
共同起業は成功への近道だと思っていました。
しかし、2025年4月に始まった2社同時設立の挑戦は、わずか4ヶ月で終わりを迎えます。
原因は「株式比率」「価値観の不一致」、そして何より「社長自身が稼げるかどうか」。
本記事では、株式会社ダイレクトヒューマンマーケティング代表・岡村孝和氏の実体験をもとに起業初期に多くの人が見落としがちな“本質的な落とし穴”を紐解きます。
「株式比率は、あとから調整できると思っていました」
2025年4月の共同起業から、8月初旬の決別まで。
わずか4ヶ月という短期間で起きたパートナーシップの破綻は、起業家にとって決して他人事ではありません。
本記事では、岡村社長のリアルな体験をもとに、「なぜ起業は失敗するのか」「どこで判断を誤りやすいのか」をマーケティング視点でひも解いていきます。
Contents
2社同時設立という“理想的すぎたスタート”

2025年4月、岡村さんは2年来の知人とともに、2社を同時に立ち上げました。
相手は経営企画BPO領域で実績を持つ人物。
岡村さん自身も営業BPO領域で経験を積んでおり、表面的には非常に相性の良いパートナーシップに見えました。
起業前から交流会やキャリア相談を通じて信頼関係があり、相手の会社にも業務で関わっていた。
「この人とならできる」
多くの起業家が一度は抱く感覚かもしれません。
しかし、この“人としての相性”と“経営者としての相性”は、必ずしも一致しません。
株式比率が生んだ、見えない主従関係
最初に違和感が生じたのは、創業時の株式配分でした。
「代表は将来のエクイティファイナンスを考えると、多めに株を持つべき」
「外部からの見られ方も重要だ」
こうした“もっともらしい正論”の結果、岡村さんの株式比率は相対的に低くなります。
形式上は対等な共同創業者。
しかし、実態は「株を多く持つ側が意思決定の主導権を握る構造」でした。
岡村さんは当時をこう振り返ります。
「ナンバー2として振る舞うべきだと思い、半年間、自分の違和感を押し殺していました」
この“我慢”こそが、後に大きなコストとなって跳ね返ります。
スピードか、慎重さか──価値観のズレは必ず顕在化する

事業が動き出すにつれ、二人の価値観の違いは明確になります。
岡村さんは、仮説検証を重ねながら前に進む“攻めのタイプ”。
一方、パートナーは契約や制度設計を重視する“守りのタイプ”でした。
営業施策や新規販路の話を持ちかけても、
「契約書が整っていない」
「リスク管理が甘い」
とブレーキがかかる。
このズレは、単なる性格の違いではなく、事業フェーズと経営者の役割認識の違いです。
立ち上げ期に必要なのは、「完璧な設計」よりも「まず売る力」。
しかし、この前提が共有されていなかったことで、意思決定のたびに摩擦が生じていきました。
M&A構想で露呈した“根本的な経営思想の違い”
決定打となったのは、将来のM&A構想を巡る議論でした。
岡村さんは、自身が立ち上げた会社をジョイントする以上、
「そこは個別に評価されるべき」
と考えていました。
しかし、相手の認識は異なります。
「それは役員報酬の範囲で処理すべき」
この一言で、岡村さんは確信します。
「この人とは、長期ではやれない」
ここで重要なのは、条件の良し悪しではありません。
“お金の分配ロジック”は、その人の経営哲学そのものだからです。
7時間の話し合いと、撤退という決断
2025年8月初旬。
岡村さんはCFO経験のある上場企業役員に相談します。
返ってきた言葉はシンプルでした。
「岡村さんに、メリットがない」
その助言を受け、オンラインと対面を合わせて約7時間の話し合いを実施し最終的に、資本金30万円の返却、株式の返還、代表辞任という形で関係を整理しました。
感情的には決して楽な判断ではありません。
それでも、「早い段階での撤退」は、最も合理的な経営判断でした。
起業で本当に重要だった、たった一つの学び
この経験から、岡村さんが得た最大の教訓は明確です。
「代表自身が、0→1でお金を生み出せるかどうか」
どれだけ優秀な参謀がいても、
どれだけ整った制度があっても、
初期フェーズでは“社長が売れるか”が全てです。
また現在は、正社員採用に固執せず、
副業人材や専門家と組む「ギルド型チーム」への可能性にも注目しています。
失敗は、語った瞬間に“価値”へ変わる

現在、岡村さんは50名規模の経営者交流会を定期開催し、上場企業経営者も参加する場を運営しています。
今回の経験も、隠すことなく共有しています。
なぜなら、起業の失敗談こそが、次の挑戦者にとって最も価値あるコンテンツだからです。
株式比率、価値観のすり合わせ、社長の役割。
これから起業を考える方にとって、本記事が一つの判断材料になれば幸いです。
次回のエピソードもどうぞお楽しみに。