2025.05.23 | u-map
学びと地域とつながる介護|碧カレッジ。

高齢になっても、学び、楽しみ、誰かの役に立ちたい——
そんな想いをかたちにした場所が、愛知県碧南市にあります。
「碧カレッジ」は、単なるデイサービスではありません。
そこには、利用者が“先生”となって教室を開き、子どもたちと自然に触れ合い、施設が運営するカフェで地域の人たちが語らう、まるで“地域のキャンパス”のような風景が広がっています。
本記事では、複合施設CORRINの中核として展開されるこの碧カレッジの取り組みを通じて、「介護」の常識を覆す新しい生き方、働き方、そして地域とのつながりについて、じっくりとご紹介していきます。
Contents
「大人のカルチャースクール」としての碧カレッジ
碧カレッジは、「高齢者自らが生きがい、やりがいを提供する大人のカルチャースクール」として、これまでにないデイサービス像を描いています。施設は2022年4月に開設され、「何歳になっても学び、楽しむ場」としてまさに“生涯現役”の理念を体現しています。
教室スタイルのプログラムは、まさに大人のカルチャーセンターそのもので、生け花や書道、算数(そろばん)、家庭科(裁縫・編物)、健康体操など、その内容は多岐にわたります。講師役を利用者自身が担う機会も設けられており、経験や知識を次世代や仲間に伝える役割が自然に生まれるよう設計されている点が特徴です。
何よりデイサービス利用者だけではなく、地域の人も同様のプログラムに参加できることはありそうでなかった取り組みと言えるでしょう。
施設内のスケジュールも自由度が高く、「趣味の時間」「仲間との時間」「自分時間」などを利用者自身が選んで組み立てられるのが魅力です。
自己決定が尊重されることで、「やりがい」の醸成に直結しています。自分で選び、自ら進むことで、主体的に生きる感覚が得られるのです。
実際の活動の様子はブログやSNSでも紹介されており、琴の演奏会やえんぴつ教室、誕生日会など多彩なプログラムが定期的に開催されています。
例えば最近では「現代琴演奏会」では、琴の美しい音色を参加者が真剣に聴き入っており、文化的教養の再発見が図られています。また「誕生日会」では利用者同士が和気あいあいとお祝いし、仲間づくりも深められています。
こうした取り組みは、単に時間を埋めるためのレクリエーションではなく、自ら学び、他者と関わりながら生活を豊かにする“場”そのものとなっています。カルチャーを通じて交流し、自己肯定感や社会的役割を取り戻す、碧カレッジならではの学び舎と言えるでしょう。
地域とつながる「ピザ窯」「カフェ」、地域共生への取り組み
碧カレッジは、単なる高齢者向けデイサービスに留まらず、同一敷地内のこども園や地域住民とも積極的に交流する「複合施設」の強みを活かしながら、地域共生をリアルに実現しています。その象徴的な取り組みが「ピザ窯」やカフェ事業の導入です。
施設が運営するピザ窯やカフェ事業は地域の声を聴き、“地域共生”を具現化する大きな柱となっています。地域住民が集い、子どもも高齢者も共に過ごす場を創出し、市民一人一人の居場所感を創り出しています。
また、複合施設内では日常的に子どもとの交流が起きています。子ども園ひまわりや放課後等デイサービスの子どもたちと「えんぴつ教室」を開いたり、一緒に苗植えやこいのぼり製作をしたりするなど、多世代による自然な触れ合いが積極的に仕掛けられています。それらはブログでも継続的に報告され、「子どもたちと一緒に菜園活動」などが良い意味で習慣化しているようです。



こうした場づくりは、高齢者にとっては役割感や存在価値を感じるきっかけとなり、子どもにとっては豊かな人間関係の土壌になります。まさに“0歳から100歳まで、誰もが住みやすいまち”を実現するための多世代交流の場がここにあるのです。
さらに、施設内のカフェは一般の方も利用可能なため地域住民との交流の受け皿となっています。炊き立てのピザを片手に語る場、近所の方がほっと一息つける場、そして子どもたちと高齢者が偶然出会う場。そうした“声を聴く”空間が日常に溶け込むことで、碧カレッジは地域の真ん中にしっかり息づいていると感じます。
フィロソフィーの浸透による離職率低下と職場文化づくり
全国から注目される評価の一つに、「離職率を大幅に下げたフィロソフィーなどの浸透」があります。これは、介護の現場において非常に高い意味を持つ指標です。
まずグループ全体のフィロソフィーは、「人が集いたくなる居場所」「学びと交流の拠点」というビジョンに根ざしています。
その理念はCORRIN全体を貫く一貫した支援方針とも結び付いており、スタッフ一人ひとりが同じ価値観を共有しながら行動できるようになっています。
また、自由で主体的な雰囲気が職場にも及んでおり、「伝える」「学ぶ」も利用者と一緒に成長できる環境が整っています。自己決定を尊重するカルチャースクール型の運営を実践しつつ、その理念を職員にも広げているのが大きなポイントです。
離職率の低下には、人間関係や働きやすさ、理念への共感が欠かせません。
碧カレッジの場合、理念が日々の活動に直結しているため、働く側も「自分ごと」として捉えやすく、モチベーションが維持されます。
その結果として、人が辞めにくい職場文化が根付いていると推測されます。
その裏付けとして退職するスタッフが非常に少ないという記録が残っています。
これは、理念や現場の工夫が数値にも表れている証と言えるでしょう。
この他、碧カレッジが立地する複合施設CORRINは、保育園、高齢者デイサービス、児童発達支援、放課後等デイサービス、地域交流サロンが隣接し、多世代共生を促す木の温もりを大切にした建築で設計されています。
施設の雰囲気はとても明るく開放的で、介護施設に抵抗がある方でも通いやすい環境が整っています。自然光が差し込む広々としたスペースには子どもや地域住民の出入りもあり、まさに地域の“居場所”として機能しています。
運営は愛知県碧南市大堤町にある社会福祉法人愛生館が行っており、デイサービスとしては平日午前の部・午後の部と二部制で開設。送迎や食事提供、趣味教室、交流サロンといった日課が緻密に組まれています。
利用者層は要支援・要介護認定を受けている方が中心ですが、身の回りが自立している方や一般の方も相談に応じて利用可能とされています。そうした柔軟な受付方針も、施設の“開かれた学び舎”らしさを感じさせます。
また、運営規定や個人情報保護方針、ハラスメント防止方針など、管理体制の整備にも力を入れており、職員・利用者双方が安心して過ごせるような環境づくりが進められています。
最後に…
今後は、今ある取り組みをさらに磨き、地域全体との連携を強化するフェーズに入っていくため、例えば地域企業や大学などとの共同プログラム、さらには高齢者が自ら運営にも関わる「運営参画型」の仕組みや、持続可能なカフェ運営など、さまざまな発展の可能性が見込まれます。
地域の声を聞き、学び、提供し、受け継ぎ…その循環がここでは回り続けています。
まさに“100年時代”を見据えた、豊かな社会構造の片鱗とも言えるかもしれません。
碧カレッジは、「大人が通いたくなる学校」「地域とつながる開かれた居場所」「スタッフも利用者も辞めない職場」という三位一体の価値を現実にしています。
複合施設CORRINの設計思想と運営のフィロソフィーが日々の活動に生きており、それらが離職率など定量的成果としても現れている点は、評価されるべき重要な成果です。
今後も、地域に根ざし、世代を越えた学びと交流の場として進化し続けようとする碧カレッジ。
その可能性には心が弾むような期待感とワクワク感しかありません。
施設概要
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- 運営会社 社会福祉法人 愛生館
- 施設名 碧カレッジ
- HP https://www.satoyama2.jp/daycare/index.html
- 住所 〒447-0025 愛知県碧南市大堤町1丁目11番地
- 業種 デイサービス(複合施設)
見学などのご要望がございましたら上記のHPへお問合せください。
※こちらは個人的な見解を含め書いておりますので実際に感じることと異なる場合もございますがご了承くださいませ。