2025.05.17 | u-map

介護の価値を“食”で地域へ届ける!二重まるの働ける介護モデルに学ぶ。

 

「介護施設」と聞くと、どんなイメージが浮かぶでしょうか。
リハビリや食事、入浴、レクリエーション…。
多くの人は「受け身の支援を受ける場所」と思い浮かべるかもしれません。

青森県八戸市にある 「無添加お弁当 二重まる」 では、少し違った風景が広がっています。
障がいや高齢など、さまざまな事情を抱える人たちが、地域の農家と一緒に野菜を育て、調理し、配達する。
利用者とスタッフが力を合わせて「地域の台所」としてのお弁当づくりに取り組んでいるのです。

「家族に食べさせたい」「大切な人に届けたい」
そんな想いから生まれた無添加弁当は、一般のお客様だけでなく、介護施設や高齢者のもとにも届けられています。

さらに、若者たちが地域に滞在し、介護や暮らしを学ぶ「介護で留学」という新たな挑戦も始まっています。

“働ける介護”という新しい可能性を、二重まるは今日も地域に届け続けています。
その現場に迫ります。

介護現場から生まれた「働ける場」への想い

「無添加お弁当 二重まる」の始まりは、介護現場でのある気づきからでした。
介護事業所で日々利用者と接する中で、スタッフは彼らの中に「何か役に立ちたい」「社会とつながりたい」という強い想いがあることに気づきます。
しかし、従来の介護サービスでは、利用者は「支援を受ける側」としての立場にとどまりがちでした。

「利用者が主体的に関われる場を作りたい」
その想いから、スタッフは地域の農家と連携し、利用者が農作業を通じて地域と関われる機会を提供し始めました。
この取り組みは、利用者にとって生きがいや自信を取り戻すきっかけとなり、次第に「働く場」としての可能性を広げていきました。

 

その後、収穫した野菜を活用し、無添加のお弁当を作る取り組みが始まります。
「家族に安心して食べてもらえるものを作りたい」という想いから、添加物を使わず、手作りにこだわったお弁当作りがスタート。
利用者とスタッフが一緒に作るお弁当は、地域の人々からも好評を得て、事業として本格化していきました。

このように、介護現場での気づきと利用者の想いから始まった「無添加お弁当 二重まる」は、今では地域と利用者をつなぐ大切な存在となっています。

無添加弁当づくり・販売の取り組み

二重まるが最初に取り組んだのは、地元農家との連携でした。
利用者とスタッフが一緒に畑に出向き、野菜の苗植えや収穫、仕分け作業を手伝う。
泥だらけになりながら、汗を流して働くその表情は、まさに「役割」を持った人の生き生きとした顔でした。

「働くなんて、もう無理だと思っていた」
「自分にできることなんて、もう無いと思っていた」

そんな利用者の方が、農作業をきっかけに少しずつ変わっていきました。
「自分が育てた野菜が、誰かのごはんになる」
「今日も誰かが待っている」
その実感が、働く喜びや生きがいへと変わっていったのです。

二重まるの厨房に一歩足を踏み入れると、朝から漂う出汁の香りにまず驚かされます。
大きな鍋で煮出されているのは、化学調味料を使わずに丁寧に取った“天然の出汁”。
スタッフが一つひとつ野菜の皮をむき、下ごしらえをしている手元には、地元農家から届けられたばかりの新鮮な野菜が並びます。

「これ、さっき畑で採れたばかりなんですよ」

スタッフがそう話しながら、利用者と一緒に野菜を洗ったり、刻んだり。
包丁を持つ手には不安そうな表情もありましたが、隣で寄り添うスタッフの声かけに、少しずつ笑顔が戻っていく様子が印象的でした。

添加物や保存料を使わず、すべてを手作りする。
「家族に食べさせたい」と胸を張って言えるものを作り続けたい。
その強いこだわりが、厨房のどこを見ても伝わってきます。

昼前になると、次々と注文が入り、配達の準備が始まります。
「今日は○○さんのお宅にも届けるよ」
「△△施設にはやわらか弁当だね」

高齢者や介護施設からも多くの注文が入り、利用者と一緒に梱包や仕分けを進める様子は、まさに“みんなで作る地域の台所”でした。

スタッフだけでなく、利用者一人ひとりが「地域に届ける」担い手として役割を果たしている光景。
その場の空気から、「食を通じてつながる」ことの意味を強く感じることができました。

「介護で留学」という新しい選択肢

「おはようございます!」

そう元気に挨拶して厨房に入ってきたのは、東京や仙台など都市部からやってきた大学生や専門学校生たち。
介護福祉を学ぶ学生だけでなく、地域づくりや教育、観光、福祉ビジネスに関心のある幅広い若者が、「介護で留学」のプログラムに参加しています。

参加のきっかけは、「介護や地域での仕事に興味はあるけれど、実際どんな現場なのか分からない」「介護のイメージが湧かない」「一度リアルな現場を見てみたい」
そんな不安や疑問から始まった学生がほとんどです。

プログラムでは、農業体験、無添加弁当づくり、利用者との交流、配達や地域イベントの手伝いなど、実際に「地域で暮らす人と一緒に働く」体験が用意されています。
机上の勉強や都市部での介護実習とは違い、地域の日常に深く入り込むリアルな学びが待っています。

ある大学生は、最初「介護は“お世話をする仕事”」というイメージを持っていました。
けれど、二重まるで利用者と一緒に畑に出て汗を流し、弁当づくりに挑戦し、地域の高齢者に配達に行くうちに、介護の見方が大きく変わっていったと言います。

「介護って、助ける・助けられるだけじゃない。
一緒に笑ったり、働いたり、地域を元気にする“仲間”として関われるんだと気づきました。」

短期間の滞在ですが、そこで得た気づきや出会いは、参加者にとって進路や価値観を見つめ直す大きな転機となっています。

介護業界だけでなく、地域に関わるすべての若者に開かれたこのプログラム。
「ここに来て、地域や介護が好きになった」
「自分も、いつかこんな場所をつくってみたい」

そんな声が、また新しいチャレンジを生み出しています。
「介護で留学」は、介護の未来だけでなく、地域や若者の未来をも動かす可能性を秘めた取り組みなのです。

今後の展開・地域や業界への期待

二重まるはこれまで、介護事業の枠を超えて「食」と「働く」をつなぐ取り組みを広げてきました。
しかし、代表はそれだけにとどまらず、さらに地域や業界全体に新しい風を吹き込もうとしています。

これから二重まるが目指すのは、「介護=支援を受ける側」という固定概念を地域ごと変えていくこと」です。
「誰かにしてもらう介護」ではなく、「誰もが誰かの役に立てる介護」「共に支え合う介護」。
その実現に向けて、地域全体を“参加型”に変えていきたいと考えています。

具体的には、今後さらに「働ける場づくり」を進化させていく構想を描いています。
農業だけでなく、地域の商店や事業者と連携し、利用者が地域の仕事にもっと関われる機会を増やしていきたい。
「介護施設」ではなく、「地域の産業や暮らしの一部として介護がある」。
そんな未来を描いています。

また、無添加弁当事業も、地域内だけでなく、他地域や都市部への発信を見据えています。
「地方だからこそ生まれた価値」を全国に届け、地域資源や介護人材の価値を見直してもらう。
それが地域経済の活性化や、地方への人材還流につながると信じています。

さらに、「介護で留学」プログラムを通じて若者との接点を増やし、地域内外の人材育成にも挑戦していきたい。
「介護は特別な仕事ではなく、誰もが関われる地域の営み」
その魅力を伝える担い手を、全国から育てていきたいと考えています。

目の前のお弁当づくり、利用者との対話、地域への一歩一歩の取り組み。
それらを積み重ねながら、二重まるは「地域まるごと健康に」「業界まるごと変革に」向けて、これからも歩みを止めることはありません。

施設情報

 

  • 運営会社 株式会社池田介護研究所
  • 施設名  共生型デイサービス 無添加お弁当二重まる
  • HP    https://www.instagram.com/quatre_ikedacarelab/
  • 住所   〒039-1101 青森県八戸市大字尻内町字八百刈25-1 
  • 業種   地域密着型通所介護 

 

見学などのご要望がございましたら上記のHPへお問合せください。

 

※こちらは個人的な見解を含め書いておりますので実際に感じることと異なる場合もございますがご了承くださいませ。

よく読まれている記事

投稿はまだありません。
記事一覧へ戻る

value481
-バリュフォー-