2025.11.07 | Podcast

【性弱説という経営哲学】 25歳で200万横領され学んだ自責思考

 

 

 

 

 

(ゲストプロフィール)
株式会社バンソウ 代表取締役  谷岡遼 社長
大阪府松原市1987年3月生まれ。
38歳、関西外国語大学在学中に通信業のアルバイトを経験し卒業と同時に起業、エルネストリンクを設立。
13期目の今期から株式会社バンソウに社名を変更し活動中。

(会社URL)https://bansow.co.jp/

 

「人は性善説でも性悪説でもなく、性弱説なんです」

 

そう語るのは、株式会社バンソーの代表取締役を務める谷岡遼社長です。
25歳で起業した彼が経験した失敗談は、多くの経営者にとって耳の痛い、しかし極めて貴重な教訓に満ちています。

 

「教員になるか、経営者になるか」

両親が教員だった谷岡さんにとって、これは自然な選択肢でした。

しかし彼が選んだのは携帯電話販売のアルバイト経験を活かした起業の道。

2013年、25歳という若さでの挑戦でした。

「本当に若かった。準備もせずに、軽い気持ちでやっちゃったな」

今だから笑って話せますが、当時は「誰かの役に立ちたい」という純粋な思いだけを胸に、アルバイト時代の先輩3人とともに事業をスタートさせたのです。

しかし、起業の現実は甘くありませんでした。

目先の給料を払うことに必死で、毎日が売上を追いかける日々。

そんな中で、ある異変に気づき始めるのです。

起業から数ヶ月が経った頃、谷岡さんは帳簿を見ながら首を傾げました。

「あれ?予想していた売上より入金が少ないな…」

最初は計算ミスかと思いました。でも、この状況が2ヶ月、3ヶ月と続きます。経営者としての直感が彼に警告を発していました。

「何かおかしい…」

調査を進めた結果、信じていた先輩が備品や在庫を横流ししていることが判明したのです。

ここで谷岡さんが取った行動に、彼の冷静さが表れています。すぐに感情的に問い詰めるのではなく、確実な証拠を押さえるため「泳がせた」のです。

「本当にしんどかったですけどね」

 

さらに深刻な事態が谷岡さんを襲います。給料日が近づいているのに支払うお金がない。

 

「来月、ましてや今月の給料払えない…」

 

25歳の若き経営者は苦労した結果、人生で初めて消費者金融に足を運ぶことになりました。借入額は約200万円。

 

「プルプル手を震わせながら消費者金融に行ったのを今でも思い出します。めちゃくちゃ怖かったですよ」

 

過去に消費者金融から借入したことがある方は体験があるかもしれません。

その声には当時の恐怖と今だから話せるという複雑な感情が混ざっていました。

利息についても痛烈な経験をします。

「パーセントで聞くとそんなもんだって当時バカなので思っていましたけど、めちゃくちゃ増えていくじゃんって思いました」

「銀行で借りましょうよ。本当に困ったらまず国金か近くの銀行にまずはご相談をしましょう」

これは同じ過ちをさせないための起業家への心からのアドバイスです。

証拠を固めた谷岡さんはついに先輩を問い詰めました。

横領額は約200万円。先輩は「本当にごめん」と謝罪し、「ゆっくり返す」と約束しました。

最初の1〜2回、確かに小さな金額が振り込まれました。でも、その後は止まる。再催促すると、また少し振り込まれる。この繰り返し…。

「先輩のせいにしちゃってましたし、すごいきつめに言ってたところもあると思う」

谷岡さんは当時の自分の対応を正直に振り返ります。

結局200万円のうち返済されたのはわずか50万円程度でした。

150万円もの損失を抱えながら谷岡さんはある決断を下します。

それは、これ以上の追及をやめることでした。

「お金のことに気を取られているのも良くないですし、怒りの感情をずっと持っているというのも良くない」

谷岡さんには「中小企業のために何かやっていくんだ」という大きな志がありました。

お金を追いかけることよりもその志に向かって前進することを選んだのです。

「そっちでちゃんとやっていくべきことが経営なんじゃないですかね」

 

この痛烈な経験から谷岡さんは経営者としての哲学を確立しました。

それが「性弱説」という考え方です。

「人は性善説でも性悪説でもなく性弱説なんです」

この言葉を聴いたとき、どう感じましたか?

人には本来、良い部分も悪い部分も含まれている。その弱さを引き出してしまう環境を作った経営者に、全責任があるという考え方です。

「苦労させていた環境を作っていたのも自分ですし、会社にとってはすごく致命的なダメージでしたけど、どうしても人のためにそういう環境を作ってしまったのも自分のせい」

これは単なる自己反省ではありません。経営者としての覚悟です。

「『○○のせい』と言っているうちは、経営者としてまだまだなんです」

谷岡さんの学びは現在も彼の経営の根幹となっています。

「今も問題が起こってきても、そこからの学びで自分が何かできないことがあるんだなとか、良い環境を作れていないことが原因だなって思えるようになりました」

問題が発生したとき、「誰のせい」ではなく「自分に何ができたか」と考えるこの自責思考こそが、組織を成長させ、経営者自身を成長させるのです。

「情に動かされやすく、常に誰かに動かされる系のため過去は大体やられちゃいますね」

そう語るものの完璧な経営者なんていません。弱さを持っているからこそ人間らしいと谷岡さんは強調します。

「何を最初に守っていくべきなのか、きっちり明確に知っておくべきかもしれません」

情に流されそうなとき、何を優先すべきか。その軸を持つことが、正しい判断につながります。

谷岡さんのこのエピソードが、なぜこれほど多くの方の心に響いたのか。それは、彼が飾らず、正直に、自分の失敗を語ってくれたからです。

人間関係における「性弱説」という新しい視点 や経営者の自責思考の重要性、そして優先順位を明確にすることの大切さ。

これらは単なる理論ではありません。200万円という高い授業料を払って得たリアルな学びなのです。

現在、谷岡さんは本業の中小企業支援事業で過去最高利益を達成されています。200万円の痛みが今の成功につながっているのです。

「やっぱり改めて振り返ると、ああいうことってやっぱりありますよね」

この言葉には、失敗を恐れず挑戦し続ける経営者の強さと、深い学びへの感謝が込められています。

お金や人との関係でしくじりを経験することは誰にでもあり、特に経営者や起業家なら、なおさらです。

大切なのは、そこから何を学び、どう成長するか。

谷岡さんは「性弱説」という独自の哲学に辿り着きましたがエピソード聴取された皆さんは自分なりの答えを見つけられましたか?

次回のエピソードもどうぞお楽しみに。

 

 

 

 

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